「請求書の締め作業は経理の〇〇さんしか分からない」「機械の段取り替えはベテランが休むと止まる」。中小企業では、こうした「あの人しか分からない仕事」が珍しくありません。マニュアルが必要なのは分かっていても、日々の仕事に追われて手が回らない、という声をよく聞きます。
マニュアルづくりが進まない一番の理由は、頭の中にある手順を、読みやすい文章に直す手間です。生成AIを使えば、この手間を大きく減らせます。担当者は話したり箇条書きにしたりするだけで、AIが手順書の形に整えてくれます。
この記事では、生成AIで業務マニュアルを作る方法を、現場の作業の書き出しから更新までの5つの手順で解説します。そのまま使えるプロンプト例と、機密情報の扱いなどの注意点、主な生成AIの無料・有料プランの違いもまとめました。
- 生成AIで業務マニュアルを作る5つの手順
- コピーして使えるプロンプト例(作成・確認・更新)
- 写真・動画と組み合わせた、現場で使えるマニュアルの作り方
- 機密情報・社内ルール・誤りの確認など、使う前の注意点
- ChatGPT・Claude・Geminiの無料・有料プランの違い(2026年10月19日確認)
生成AIでマニュアルづくりが速くなる理由
マニュアルづくりの作業は、大きく分けると「手順を思い出して書き出す」「読みやすい文章と構成に整える」「現場で正しいか確かめる」「業務が変わったら直す」の4つです。このうち、生成AIが得意なのは2つ目の「整える」作業です。
| 作業 | 従来のやり方 | 生成AIを使う場合 |
|---|---|---|
| 手順の書き出し | 担当者がパソコンで一から文章を書く | 担当者は話す・箇条書きにするだけ。録音の文字起こしでもよい |
| 文章と構成を整える | 見出し、番号、言い回しを考えて清書する | AIが手順書の形に整え、注意点やよくあるミスの欄も作る |
| 現場での確認 | 担当者が読み直して直す | 同じく人が確認する(ここはAIに任せられない) |
| 更新 | どこを直すか探して書き換える | 変更点を伝えて、該当箇所の書き換え案を出させる |
つまり生成AIは、マニュアルを「自動で作る」道具ではなく、書く手間を減らし、担当者が「話す」と「確認する」に集中できるようにする道具です。逆に言えば、現場の担当者が手順を出さない限り、AIは自社の業務を知りません。この前提を押さえておくと、失敗が減ります。
生成AIで業務マニュアルを作る5つの手順
作業を書き出す
マニュアル化する業務を選び、作業の区切りを洗い出す
録音・箇条書き
担当者に手順を話してもらうか、メモで書き出してもらう
AIで整形
プロンプトとメモを入れて、手順書の下書きを作る
現場で確認
別の社員が下書きどおりに作業して、抜けや誤りを直す
公開・更新
置き場所と更新担当を決め、業務が変わったら直す
手順1:現場の作業を書き出す
最初に、どの業務からマニュアルにするかを決めます。おすすめは、「担当者が休むと止まる」「月に1回・年に1回しかやらないので毎回思い出すのに苦労する」「新人に毎回同じことを教えている」のどれかに当てはまる業務です。
業務を決めたら、作業の区切りを洗い出します。たとえば「月末の請求書発行」なら、「売上データの確認」「請求書の作成」「上長の確認」「送付」「送付記録の保存」のように、5〜10個程度の大きな区切りにします。この段階では細かい手順は不要です。
手順2:録音や箇条書きで手順を集める
次に、担当者に区切りごとの手順を出してもらいます。文章を書くのが苦手な人には、実際に作業しながら話してもらい、スマホで録音するのが一番早い方法です。聞き手が「そこで何を確認していますか」「間違えやすいところはどこですか」と質問すると、本人も意識していなかったコツや判断の基準が出てきます。
録音は文字起こしアプリやスマホの音声入力などでテキストにします。話し言葉のまま、言い間違いや「えーと」が混ざっていても構いません。整えるのはAIの仕事です。書く方が得意な人には、思いつく順に箇条書きしてもらいます。
手順3:生成AIで手順書の形に整える
集めたメモを、次の章のプロンプト例と一緒に生成AIに入れます。ポイントは、誰が読むのか、どんな形式で出してほしいのか、メモにないことは書かないの3つを必ず指示することです。指示があいまいだと、AIが一般的な知識で手順を補い、自社のやり方と違う内容が混ざります。
1回で完璧な下書きを求める必要はありません。「手順3をもっと細かく」「専門用語に説明を付けて」と、やり取りしながら整えていきます。
手順4:現場で確認する
AIが作った下書きは、必ず現場で確認します。おすすめは、その業務をやったことのない社員に、下書きだけを見て実際に作業してもらう方法です。手が止まったところが、説明の足りない箇所です。担当者本人が読むだけでは、頭の中で補ってしまうため抜けに気づけません。
確認では、画面の名前、ボタンの位置、金額や期限、取引先ごとの例外の扱いなど、AIが知りようのない部分を重点的に見ます。
手順5:公開して、更新し続ける
完成したマニュアルは、社員がすぐ開ける場所に置きます。共有フォルダやGoogleドキュメントなど、スマホからも見られる場所が便利です。表紙か冒頭に「最終更新日」「更新担当者」を書いておきます。
マニュアルは作った瞬間から古くなり始めます。システムや取引先が変わったときに更新担当が直す、年に1回は全体を見直す、といったルールを決めておきましょう。更新のときも生成AIが使えます。変更点を伝えれば、書き換えが必要な箇所と修正案を出してくれます。
「あの人しか分からない仕事」、
マニュアルにするところからお手伝いします
offtieでは、担当者への聞き取りや録音の整理、生成AIを使ったマニュアルの下書きづくり、社内でAIを使うためのルールづくりをお手伝いしています。まずはどの業務からマニュアルにするか、一緒に整理しませんか。
そのまま使えるプロンプト例
ここでは、ChatGPT・Claude・Geminiのどれでも使える形のプロンプトを紹介します。【】の部分を自社の内容に書き換えて使ってください。
プロンプト1:メモから手順書を作る
あなたは中小企業の業務マニュアルを作る担当者です。下のメモをもとに、【入社1年目の事務担当】が初めてでも迷わずに作業できる手順書を作ってください。
・業務名:【月末の請求書発行】
・使う道具:【会計ソフト名、Excel】
・出力形式:1. この業務の目的 2. 事前に準備するもの 3. 手順(番号付き、1つの番号に1つの操作) 4. 間違えやすい点 5. 困ったときの相談先
・メモに書かれていないことは付け足さず、分からない部分は【要確認】と書いてください。
・専門用語には短い説明を付けてください。
メモ:【ここに箇条書きや文字起こしを貼り付け】
プロンプト2:抜けや分かりにくい点を洗い出す
次の手順書を、この業務をやったことのない新人の立場で読んでください。手順が抜けていそうな箇所、判断の基準が書かれていない箇所、分かりにくい言葉を、手順の番号とあわせて一覧にしてください。直した文章は作らず、担当者に確認すべき質問の形で出してください。
手順書:【ここに下書きを貼り付け】
プロンプト3:変更点を反映する
次の手順書を、下の変更点に合わせて更新してください。変更が必要な箇所だけを「変更前」「変更後」の形で示し、それ以外の部分は書き換えないでください。
変更点:【例:請求書の送付方法が郵送からメール送付に変わった】
手順書:【ここに現在のマニュアルを貼り付け】
このほか、「この手順書から、新人がつまずきやすい点をQ&A形式で5つ作って」「この手順書を、現場に貼れるA4一枚のチェックリストにして」と頼むと、同じ内容から別の形の資料も作れます。
写真・動画と組み合わせる
文章だけのマニュアルは、パソコン操作や機械の扱いのように「見れば一瞬で分かる」作業では、かえって伝わりにくくなります。生成AIで作った文章と、写真や動画を組み合わせると、現場で使えるマニュアルになります。
| 作業の種類 | 向いている組み合わせ | 作り方のコツ |
|---|---|---|
| パソコン・システムの操作 | 文章の手順+画面の画像 | 手順の番号と同じ番号を画像に書き込む。顧客名などは画像でも隠す |
| 機械・道具の扱い | 文章の手順+写真 | 正しい状態と間違った状態の写真を並べる |
| 動きやタイミングが大事な作業 | 短い動画+文章の要点 | 1本1〜3分に分け、動画ごとに文章で要点と注意点を添える |
| 判断が必要な作業 | 文章の判断基準+事例 | 「こういうときはこうする」の例を、過去の実例から3〜5個載せる |
動画を使う場合は、作業しながら話している動画を撮り、その音声を文字起こししてAIで手順書に整える、という流れにすると、動画と文章の両方が一度にそろいます。動画は長くなると見返されないので、手順の区切りごとに短く分けるのがコツです。
社員に写真や画面の画像を撮ってもらう際は、写り込みに注意してください。顧客の名前や住所、金額が写った画像をそのままAIに入れたり、マニュアルに載せたりしないようにします。
生成AIでマニュアルを作るときの注意点
機密情報・個人情報を入力しない
生成AIに入力した内容が、サービスの提供会社でどう扱われるかは、プランや設定によって異なります。個人向けのプランでは、入力内容がモデルの改善(学習)に使われる設定になっていることがあり、多くの場合は設定で無効にできます。一方、各社のビジネス向けプランは、初期設定で学習に使わないと公式に案内されています(詳しくは次の章)。
個人情報保護委員会も、生成AIサービスに個人情報を含むプロンプトを入力する場合は、利用目的の範囲内か十分に確認し、本人の同意なく個人データを入力する場合は、提供事業者がそのデータを学習に使わないことなどを確認するよう注意を呼びかけています。マニュアルづくりでは、顧客名・社員名・電話番号・金額などは「A社」「担当者B」「〇〇円」のように置き換えてから入力するのが基本です。
社内ルールを先に決める
社員が個人のアカウントでばらばらに生成AIを使い始めると、どんな情報が入力されたか会社が把握できなくなります。マニュアルづくりを始める前に、最低限次のことを決めておきましょう。
- 使ってよい生成AIサービスとプラン(会社で契約するか、個人の無料版を認めるか)
- 入力してはいけない情報(顧客情報、社員の個人情報、取引条件、未公開の情報など)
- 学習に使われない設定にすることの徹底
- AIで作った文書は、必ず人が確認してから社内に公開すること
AIを社内に入れるときにつまずきやすい点は「AI導入が失敗する会社の共通点」でも解説しています。
誤りを必ず確認する
生成AIは、渡していない情報を一般的な知識で補い、もっともらしい文章にすることがあります。マニュアルでとくに危ないのは、社内システムの画面名、金額や期限、法律や安全に関わる手順です。プロンプトで「メモにないことは書かない」「不明点は【要確認】と書く」と指示したうえで、手順4の現場確認を省かないでください。安全に関わる作業のマニュアルは、責任者が最終確認するルールにしておくと安心です。
ChatGPT・Claude・Geminiの無料・有料プランの違い
マニュアルの下書きづくりは、どの生成AIの無料版でも試せます。ただし、無料版は利用できる回数や機能に上限があり、社内の情報を扱うならデータの扱いも確認が必要です。主なサービスの公式サイトの情報を、2026年10月19日時点でまとめました。料金や内容は頻繁に変わるため、契約前に必ず公式ページで最新の情報を確認してください。
| サービス | 個人向けプラン | ビジネス向けプラン | 入力内容の学習利用(公式の記載) |
|---|---|---|---|
| ChatGPT(OpenAI) | 無料版/Go/Plus/Pro | Business/Enterprise(企業向けは2名から) | 個人向けは設定で無効化が可能。Business・Enterpriseは初期設定で学習に使わない |
| Claude(Anthropic) | Free(無料)/Pro(月20ドル、年払いなら月17ドル相当)/Max(月100ドルから) | Team(Standardは1人月25ドル、年払いなら月20ドル)/Enterprise | 個人向けは設定で無効化(オプトアウト)が可能。Team・Enterpriseは初期設定で学習に使わない |
| Gemini(Google) | 無料/Google AI Plus(月725円)/Google AI Pro(月2,900円)/Google AI Ultra(月14,500円から) | Google Workspace with Gemini | Workspaceでは、許可なく組織外で生成AIモデルの学習に使わず、人によるレビューも行わないと案内 |
※2026年10月19日に各社の公式サイト(料金ページ・プライバシーに関するページ)で確認。ChatGPTの各プランの金額は公式ページで表示を確認できなかったため記載していません。Claudeの料金は米ドル建ての表示です。
選び方の目安は次のとおりです。
- まず試したい:無料版で、個人情報を含まないメモを使って下書きの質を比べる
- 担当者1〜2人で本格的に使う:個人向けの有料プランで、学習に使わない設定にしたうえで使う
- 社内の複数人で使い、社内情報も扱う:ビジネス向けプランを会社で契約し、管理者がアカウントを管理する
どのサービスが自社に合うかは、普段使っているメールや文書のツールとの相性でも変わります。Claudeの特徴は「Claudeで何ができる?」、AIを使った業務効率化の全体像は「AIで実現する中小企業の業務効率化」もあわせてご覧ください。
完成前のチェックリスト
生成AIで作ったマニュアルを社内に公開する前に、次の項目を確認してください。
AIで作った業務マニュアルの公開前チェック
- 業務の目的と、誰が読むためのマニュアルかが冒頭に書かれている
- 手順に番号が付き、1つの番号に1つの操作になっている
- 判断が必要な場面で、判断の基準や例が書かれている
- 間違えやすい点と、困ったときの相談先が書かれている
- 【要確認】の箇所がすべて担当者に確認され、消えている
- その業務をやったことのない社員が、マニュアルだけで作業できた
- 画面名・金額・期限・法律や安全に関わる記述を担当者が確認した
- 顧客名や個人情報が、文章にも画像にも入っていない
- 最終更新日と更新担当者が書かれている
- 社員がスマホやパソコンからすぐ開ける場所に置かれている
マニュアルは新入社員の受け入れでも役立ちます。入社後の教え方とあわせて整えると、教える側の負担も減らせます。
新入社員の受け入れにマニュアルをどう生かすかは「オンボーディングとは?中小企業の新入社員の進め方」で解説しています。
よくある質問
無料版の生成AIでも業務マニュアルは作れますか?
作れます。箇条書きのメモを手順書の形に整える程度であれば、ChatGPT・Claude・Geminiの無料版でも十分に試せます。ただし無料版は利用回数などの上限が低く、個人向けプランでは入力内容がモデルの学習に使われる設定になっている場合があります。社内の情報を入れる前に、学習に使われない設定にするか、学習に使われないビジネス向けプランを検討してください。
どの生成AIを使えばよいですか?
マニュアルの下書きづくりであれば、ChatGPT・Claude・Geminiのどれでも始められます。社内でGoogle Workspaceを使っているならGemini、Microsoft 365中心なら各社の連携機能、といったように、普段使っている道具との相性で選ぶのが現実的です。まずは無料版で同じメモを入れて比べ、読みやすいと感じたものを選んでください。
AIが作ったマニュアルの内容が間違っていることはありますか?
あります。生成AIは、渡していない情報を一般的な知識で補ったり、もっともらしい手順を付け足したりすることがあります。とくに社内システムの画面名、金額、期限、法律に関わる手続きは、必ず実際の担当者が確認してください。プロンプトで「メモにないことは書かず、不明な点は【要確認】と書く」と指示しておくと、確認すべき箇所が分かりやすくなります。
マニュアルはどの形式で残すのがよいですか?
社員がすぐに開ける場所に置くことが最優先です。Googleドキュメントや共有フォルダのWord、社内で使っているクラウドのメモツールなど、スマホからも見られる形式がおすすめです。印刷して現場に貼る場合も、元データは1か所で管理し、更新日と担当者を書いておくと古い版が出回るのを防げます。
マニュアルづくりを外部に頼むこともできますか?
できます。業務の聞き取りや録音の文字起こし、AIでの整形、写真の挿入といった作業は外部に任せ、社内では内容の確認だけを行う進め方もあります。ただし、手順が正しいかどうかを判断できるのは現場の担当者だけなので、確認の時間は必ず社内で確保してください。
まとめ
生成AIで業務マニュアルを作る方法は、現場の作業を書き出す、録音や箇条書きで手順を集める、AIで整える、現場で確認する、更新し続けるの5つの手順です。AIが代わりにやってくれるのは「整える」作業で、手順を出すことと正しいか確かめることは、現場の担当者にしかできません。
機密情報を入力しない、社内ルールを先に決める、誤りを必ず確認する、という3つの注意点を守れば、無料版からでも始められます。まずは「担当者が休むと止まる業務」を1つ選び、この記事のプロンプト例で下書きを作ってみてください。
offtieのAI活用・マニュアル整備支援
「あの人しか分からない仕事」をなくしたい中小企業に向けて、生成AIを使ったマニュアルづくりを現場に合わせてお手伝いします。
- マニュアル化する業務の洗い出しと優先順位づけ
- 担当者への聞き取り・録音の整理と、生成AIでの下書きづくり
- 写真・画面の画像を入れた、現場で使えるマニュアルの仕上げ
- 生成AIの社内利用ルールづくりと、社員向けの使い方レクチャー
- 事務作業そのものの代行(マニュアル化した業務の引き受け)
「まず1業務だけ試したい」といったご相談も歓迎です。お見積りは無料です。
参考資料
- OpenAI「ChatGPT プランと料金」(2026年10月19日確認) Web
- OpenAI「OpenAI におけるエンタープライズプライバシー」(2026年10月19日確認) Web
- Anthropic「Claude Plans & Pricing」(2026年10月19日確認) Web
- Google「Gemini サブスクリプション(Google AI プラン)」(2026年10月19日確認) Web
- Google Workspace ヘルプ「Google Workspace の生成 AI に関するプライバシー ハブ」(2026年10月19日確認) Web
- 個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」(2023年6月2日) Web
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