- 地方の中小企業でも、SNSで応募数2.8倍(求人広告費0円)、2か月で52件のエントリーといった成果を上げた例がある
- 成功した会社の共通点は、①続けている ②現場のリアルを見せている ③ライブ配信やコメント返信で双方向にしているの3つ。大きな予算や専門的なノウハウは必須ではない
- 始める前に「誰に来てほしいか」「その人が何を知りたいか」「誰が撮って誰が出るか」「何回出すか」の4つを決めると続きやすい
- 地方では、ホームページにSNSを載せている建設会社はまだ36.1%(offtie調査)。今から始めても十分に目立てる
前回の記事では、なぜSNSのオーガニック運用が採用や会社PRに効果的なのかを解説しました。今回は、実際に成果を上げた地方中小企業の事例を詳しく紹介し、そこに共通するポイントを整理します。
なぜ地方企業の事例から学ぶべきか
都市部の大企業の事例は、予算規模も体制も異なるため、そのまま参考にしづらいことがあります。一方、地方の中小企業の事例は、限られた人員と予算の中でどう工夫したかが見えるため、自社に置き換えて考えやすいという特徴があります。
特に地方企業の採用では、次のような構造的な難しさがあります。
- 母集団が小さい——地域内の求職者数そのものが限られており、求人媒体に出しても届く人数に上限がある
- 知名度がない——地域では知られていても、県外や若い世代にはまったく認知されていない
- 業種イメージのハンデ——製造・建設・運送などは、実際の働き方が伝わる前に候補から外されてしまう
SNSがこの3つに効くのは、「地域の外にも届く」「会社の中身を継続的に見せられる」という2点を同時に満たせるからです。以下の事例は、いずれもこの構造をSNSで乗り越えたケースです。
事例1:求人広告費をかけずに応募数2.8倍
群馬県のある金属加工会社では、SNSでの継続的な発信により、求人広告費をかけずに応募数を伸ばしたと報告されています。
製造業は求職者から敬遠されがちな業種と言われますが、現場の様子や働く人の姿をSNSで継続的に伝えることで、「入社前のイメージのギャップ」を埋めたことが成果につながったと考えられます(参考記事)。
事例2:毎日15分のライブ配信が入社の決め手に
宮城県のある工務店では、Instagramでのライブ配信を毎日15分、30日間継続したところ、新卒就活生から多数の応募が集まったと報告されています。
興味深いのは、内定が決まった学生が全員、そのライブ配信を毎日視聴していた層だったという点です。一方向の情報発信ではなく、双方向でやり取りできるライブ配信という形式が、会社への理解と信頼を深める効果を生んだと考えられます(参考記事)。
事例3:2ヶ月で52件のエントリーを獲得
岡山県の従業員10名以下の中小企業では、Instagramでの採用発信を通じて、2ヶ月で52件のエントリーを獲得し、当初の採用計画を上回る成果を上げたと報告されています。
小規模な会社であっても、専任の採用担当や大きな予算がなくても、継続的な発信によって短期間で成果につなげられることを示す事例です(参考記事)。
3つの事例に共通するポイント
- 継続していること——単発の投稿ではなく、日々・毎週といったペースで発信を続けている
- 現場のリアルさを伝えていること——きれいに作り込んだ広告的な発信ではなく、働く人や日常の様子をそのまま見せている
- 双方向のやり取りがあること——ライブ配信やコメントへの返信など、見る側が参加できる仕組みがある
大きな予算も、専門的なノウハウも、成功の必須条件ではありません。「続けること」と「リアルさを見せること」——この2つが、地方の中小企業でも成果を出せている一番の理由です。
自社に置き換えるための4つの問い
事例を読んで「うちでもできそう」と思っても、そのまま真似をすると続きません。始める前に、次の4つを言葉にしておくことをおすすめします。
誰に来てほしいか
「若い人」ではなく、「地元に残りたい高卒の子」「県外から戻りたい20代」など、具体的な人物像まで落とす
その人が知りたいことは何か
給与だけでなく、一日の流れ、先輩の人柄、休みの取りやすさなど、応募前に不安になる点を洗い出す
誰が撮って、誰が出るか
撮影担当と登場する社員を先に決めておく。経営者が一人で背負うと必ず止まる
どのくらいの頻度で出すか
週2回でも十分。繁忙期でも守れるペースを基準にする
紹介した3つの事例はいずれも、この4点が明確でした。毎日ライブ配信を続けた工務店も、「学生が知りたいのは現場の空気」という前提があったからこそ、内容がぶれずに続けられています。
中小企業がSNS採用を始める手順(媒体選び〜応募導線)
4つの問いに答えられたら、実際の準備に入ります。SNS採用は「アカウントを作って投稿する」だけでは応募につながりません。見つけてもらい、会社を知ってもらい、応募してもらうまでの流れを、最初に設計しておくことが大切です。
手順1:来てほしい人が使っている媒体を選ぶ
媒体は「流行っているもの」ではなく、「来てほしい人が毎日開いているもの」で選びます。総務省の令和7年度の調査では、主なSNSの年代別利用率は次のとおりでした。
| 媒体 | 10代 | 20代 | 30代 | 40代 | 採用での使い方 |
|---|---|---|---|---|---|
| LINE | 96.4% | 97.7% | 97.9% | 96.6% | 発信よりも、応募前の質問や見学の申し込みを受ける窓口に向く |
| YouTube | 95.0% | 96.3% | 94.0% | 91.6% | 仕事の流れや社員インタビューなど、長めの動画で中身を詳しく伝える |
| 69.3% | 82.6% | 76.6% | 67.1% | 写真・短い動画で職場の雰囲気を見せる。採用発信の軸にしやすい | |
| X(旧Twitter) | 56.4% | 73.4% | 67.7% | 57.0% | 日々の出来事や会社の考えを文章で発信する。拡散されやすい反面、継続的な更新が必要 |
| TikTok | 67.9% | 61.5% | 44.7% | 42.6% | 高校生・10代に届きやすい。短い動画は他の媒体にも流用できる |
| 14.3% | 23.4% | 37.4% | 38.9% | 若手より、30〜40代の経験者や地域のつながりに届きやすい |
※総務省「令和7年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」より。全国13〜79歳1,800人が対象。「採用での使い方」はofftieの整理です。
新卒や20代を狙うならInstagram、高校生ならTikTokも候補、30〜40代の経験者ならFacebookも選択肢に入ります。最初から複数の媒体を同時に動かすと続かないため、軸になる媒体を1つ決め、撮った動画や写真を他の媒体にも流用するくらいの運用から始めるのがおすすめです。
手順2:プロフィールで「どんな会社か」を一目で伝える
投稿を見て興味を持った人は、まずプロフィールを開きます。ここで会社の所在地、事業内容、採用を行っていることが分からなければ、そこで離れてしまいます。プロフィールには「〇〇県〇〇市の金属加工会社/社員25名の日常を発信/20代の仲間を募集中」のように、場所・仕事・募集の有無を短く書き、採用ページへのリンクを置きます。
手順3:応募までの導線を軽くしておく
マイナビの「2027年卒 大学生のライフスタイル調査」では、就職活動でのSNSの活用方法として最も多かったのが「企業ページを閲覧」(80.0%)でした。一方で、就職活動にSNSを「活用したくない」と答えた学生は51.7%と、「活用したい」(48.3%)を上回っています。理由の上位は「プライベートなものなので見られたくないから」(66.3%)でした。
つまり、学生は企業の発信は見ていても、自分のアカウントで企業とやり取りすることには慎重です。DMで応募してもらう前提にせず、SNSは「会社を知ってもらう場所」、応募は採用ページのフォームやLINEで受けるという役割分担にしておくと、応募のハードルが下がります。「見学だけ」「話を聞くだけ」の入口を用意しておくのも効果的です。
手順4:投稿のルールを決めてから始める
撮影してよい場所、社員が映る場合の同意の取り方、取引先や現場の情報をどこまで出してよいかを、最初に決めておきます。また、2022年10月施行の改正職業安定法により、労働者を募集する企業には、求人情報について虚偽や誤解を生じさせる表示をせず、正確で最新の内容に保つ「的確表示」が義務付けられています。SNSで募集を告知する場合も、給与や休日などの条件は求人票と食い違わないようにし、募集を終えたら告知を更新しましょう。
軸になる媒体、プロフィールの一文、応募の受け口(フォーム・LINE)、投稿のルール、担当者と頻度。この5つが決まっていれば、投稿が少し不格好でも応募につながる土台はできています。
何を投稿すればいいか。ネタの作り方
最も多くの会社がつまずくのが「投稿するネタがない」という壁です。これは、ネタが本当にないのではなく、日常のどれが価値ある情報なのか判断できていない状態です。採用目的であれば、次の5つの型を回すだけで十分に成り立ちます。
| 投稿の型 | 内容の例 |
|---|---|
| 仕事の中身 | 実際の作業風景、使っている機械や道具、完成した製品 |
| 働く人 | 社員インタビュー、入社理由、一日のスケジュール |
| 会社の日常 | 朝礼や休憩時間、社内イベント、事務所や休憩室の様子 |
| 知識・技術の解説 | 業界の素朴な疑問に答える、専門的な工程をかみ砕いて説明する |
| 募集の告知 | 求人情報、見学会の案内。全体の1〜2割に抑える |
ポイントは、最後の「募集の告知」を主役にしないことです。求人情報ばかりのアカウントは見続けてもらえません。日常や仕事の中身を積み重ねた上に告知を置くからこそ、応募という行動につながります。
うまくいかない会社との違い
同じようにSNSを始めても成果につながらない会社には、共通する特徴があります。
- きれいに作り込みすぎている——広告のような仕上がりは、かえって「本当の様子が分からない」と受け取られる
- 更新が不定期で止まる——3ヶ月空いたアカウントは、求職者から「今は採用していない」と判断されてしまう
- コメントやDMに反応しない——反応がない相手には、応募という次の行動を取りにくい
- 採用ページへの導線がない——興味を持っても、応募の入口が示されていなければそこで止まる
紹介した事例との差は、ノウハウや予算ではなく、この4点の有無に集約されます。
SNS採用の成果をどう測るか
SNS採用は、始めてすぐに応募が増えるものではありません。だからこそ、途中経過を数字で確かめないと「効果があるのか分からない」まま止めてしまいがちです。見るべき指標は、フォロワー数だけではありません。応募までの流れに沿って、次の4段階で確認します。
| 段階 | 見る指標 | 数字が伸びないときの見直し先 |
|---|---|---|
| 見つけてもらう | 投稿が表示された人数(リーチ)、新しく見た人の数 | 投稿の頻度、ハッシュタグや地域名の入れ方、短い動画の活用 |
| 興味を持ってもらう | プロフィールを見た人数、保存・コメントの数 | 投稿の内容。仕事の中身や働く人が伝わる投稿を増やす |
| 行動してもらう | 採用ページへのリンクのクリック数、LINEの友だち追加数 | プロフィールの一文、リンクの置き方、投稿内での案内 |
| 応募・入社 | SNS経由の応募・見学の申し込み数、入社数、定着 | 応募フォームの入力項目、応募後の連絡の速さ、面接の内容 |
※リーチやプロフィールの閲覧数は、InstagramやXなどのビジネス向けの分析機能(インサイト等)で確認できます。項目名は媒体によって異なります。
なかでも一番大切なのは、面接に来た人に「どこで会社を知ったか」「応募前に何を見たか」「どの投稿が印象に残ったか」を聞き、記録することです。SNSを見てから求人媒体経由で応募する人もいるため、応募の経路だけを見ていると、SNSの効果を見落とします。事例2の「内定者は全員ライブ配信を毎日見ていた」という事実も、応募者が何を見ていたかを把握して初めて分かることです。
数字は月に1回、同じ指標を表にまとめるだけで十分です。3か月ほど続けると、反応が良い投稿の型や、流れが途切れている段階が見えてきます。
SNS採用 運用チェックリスト
- 来てほしい人の人物像が、一文で言える
- その人がよく使う媒体を、軸として1つ決めている
- プロフィールに所在地・仕事内容・募集中であることが書かれている
- プロフィールから採用ページやLINEに1回のタップで進める
- 撮影・投稿・返信の担当者が決まっている
- 週1〜2回以上のペースで、3か月以上更新が続いている
- 求人の告知は投稿全体の1〜2割に抑えている
- コメントやメッセージに、その日のうちに返信している
- SNSに書いた条件が、求人票の内容と食い違っていない
- 面接で「何を見て応募したか」を聞き、記録している
当てはまらない項目が多い場合は、投稿の中身より先に「導線」と「体制」を整えることから始めましょう。
よくある質問
地方の小さな会社でも、SNS採用で成果は出ますか?
出る可能性は十分にあります。SNSは地域の外にも届き、会社の中身を継続的に見せられるため、母集団の小ささや知名度の低さを補いやすい手段です。この記事で紹介した事例も、従業員数十人以下の地方企業です。ただし、数回投稿しただけで応募が来ることはまれで、少なくとも半年程度は発信を続ける前提で考えることをおすすめします。
どのSNSから始めればよいですか?
来てほしい人がよく使っている媒体から始めます。総務省の調査(令和7年度)では、20代の利用率はInstagramが82.6%、Xが73.4%、10代ではTikTokが67.9%でした。新卒や20代を狙うならInstagramを軸にし、余力があれば短い動画をTikTokやYouTubeショートにも流用する形が始めやすいです。応募前の連絡窓口としては、利用率の高いLINEを用意しておくと便利です。
採用担当者がいなくても続けられますか?
続けられますが、経営者が一人で抱えると止まりやすくなります。撮影する人、投稿文を書く人、コメントやメッセージに返信する人を分け、週2回など繁忙期でも守れるペースに決めておくことが大切です。撮影だけ社内で行い、編集や投稿の作業を外部に任せる方法もあります。
社員が顔出しを嫌がる場合はどうすればよいですか?
無理に顔を出してもらう必要はありません。手元の作業、後ろ姿、道具や現場の風景、声だけのインタビューなどでも、仕事の中身や職場の雰囲気は伝わります。出演する場合は、事前に本人の同意を取り、掲載してよい範囲を決めておきましょう。
SNSを始めたら、求人広告やハローワークはやめてもよいですか?
すぐにやめる必要はありません。求人媒体やハローワークは「今、仕事を探している人」に届き、SNSは「まだ転職を考えていない人」も含めて会社を知ってもらう役割を持ちます。求人を見た人がSNSで会社の様子を確かめる、という流れもあるため、両方を併用し、面接で「何を見て応募したか」を聞きながら配分を見直すのが現実的です。
まとめ
紹介した3つの事例はいずれも、特別な広告予算をかけたわけではなく、日々の発信を地道に続けた結果として成果を上げています。自社の規模や業種が違っても、「継続」「リアルさ」「双方向性」という3つのポイントは、そのまま参考にできる考え方です。
地方の中小企業にとってSNSは、母集団の小ささと知名度のなさという2つのハンデを、費用をかけずに埋められる数少ない手段です。まずは投稿の型を3つ決め、週2回のペースで半年続けてみる——それだけでも、求人媒体だけに頼っていた状態からは確実に前に進みます。採用業務そのものの負担が大きい場合は「中小企業の採用アウトソーシング活用術」もあわせてご覧ください。
媒体選びやプロフィール、応募導線の設計から一緒に考えてほしい場合は、offtieにご相談ください。お見積りは無料です。
参考資料
- 総務省 情報通信政策研究所「令和7年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」(2026年6月公表) Web
- マイナビ キャリアリサーチLab「2027年卒 大学生のライフスタイル調査<将来像・就職活動について>」 Web
- 厚生労働省「令和4年職業安定法の改正の概要について」 PDF
- 事例1:奥拓也「SNS採用で応募ゼロから月10件へ!中小企業の人材募集を劇的改善した成功事例」(note、2025年6月) Web
- 事例2:株式会社あいホーム 伊藤謙「内定辞退ゼロを実現する地方工務店の『応援する』採用ブランディング」(note、2025年1月) Web
- 事例2:ダイヤモンド・オンライン「従業員70人の地方企業が『就活生100人』を集めた、インスタ採用術の極意」(2021年8月) Web
- 事例3:株式会社OTONA「中小企業のInstagram採用で2ヶ月52エントリー獲得した方法」 Web